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トップ > スペシャルページ一覧 > 第13回小説現代長編新人賞3次選考通過作品の講評

第13回小説現代長編新人賞
3次選考通過作品の講評

第13回小説現代長編新人賞
3次選考通過作品の講評

第13回小説現代長編新人賞は、2次選考で17作品が選ばれました。編集部で3次選考を行った結果、次の5作品が最終選考で審査されることになりました。

最終候補作品

sweet my home / 神津かみづ 凛子

ハレマチ / 榛葉しんば

Cocoon / 夏原なつばら エヰジえいじ

鍋島侯爵夫人 / 初瀬はせ みのり

G / 森谷もりや 祐二

二次選考通過作品の講評

人体衛星「薊君」 雨柳知畝

冒頭から中盤までのストーリーラインが弱いので、この世はミルクレープのように何層にも重なってできているというSF設定に乗れるまで苦労した。そのため、縦横無尽の想像力が生かしきれなかったのが残念。きちんと整理できたら、面白いボーイミーツガールになるのではと感じた。

女王の遺言 在藤鍵

小学校の同級生が校内で亡くなり、その十年後の同窓会。「女王」と呼ばれ特別な存在だった彼女をめぐり、クラスメイトたちが思いを馳せる。他視点の作りは定番といえば定番で、終盤にかけての掘り下げも足りないが、先への興味を惹く展開力、とにかくページを繰らせる力がある。違ったかたちの青春ミステリーをまた読ませてほしい。

弟子にござる 今福慶一郎

時代小説を書きなれている筆致で、安定感は充分。人物造形も過不足なく描き分けられており、魅力的な仕上がりだった。
図抜けることができなかったのは、物語の筋立てがこぢんまりとしているところ。市井もののワクを超えるスケールを展開して欲しかった。終盤の決闘場面の迫力は、次に応募する作品に盛り込むことを忘れずに。

はるか、ウルトラマリン 梅村ともひろ

スケールの大きな話で、登場人物がいきいきと描かれている。画家を目指していたのに画材を手に入れることを頼まれた主人公の苦悩や、主人公と父親との関係性なども上手く描かれており、読み応えがあった。しかし、史実を都合よく曲げてしまうところが残念。著名な絵画や彫刻が多数出てくるのに、描写がないのもマイナスポイント。

七月七日、千本鳥居の石段でキミと出逢った 小川みゆき

男子高校生は少し幼く、女子高校生は大人っぽく、とそれぞれの視点をうまく描き分けられている。伸び伸びとした文章で、人物の感情の動きも追いやすい。惜しむらくは、読み手を驚かせる企みがないこと。「死」に憧れる男子と、病に侵された女子を結びつける発想はいいが、もう一段階ひねりがないと、読み手に強い印象を残せない。次作に期待。

罪と罪 上栁政雄

日本の青年とベネズエラの青年の友情がバッティングセンターで育まれる。二人の間に流れる緩やかな時間と空気が読んでいて心地いい。時折、人生の真実が滲んでいるかのような気にさせられる会話のセンスもいい。ベネズエラについての説明的な文章など、地の文を磨けばもっとよくなる。

鬼心中 倉谷山椒魚

鳥屋の藤九郎と両足を失った元立目形の魚之助がコンビを組んで謎に挑む、という設定は独創的で、文章にも艶っぽさを感じた。魚之助のジェンダー論にまで踏み込めていたのも良い。しかし、世界感に合わせてこの文体を選んだことはわかるが、読み辛く情景を浮かべにくかったのは難。事件の真相にも、もうひとひねり欲しかった。

おとなの勲章 河村誠一

学習塾を材にとり昭和後期から現在までを描いた、ビジネス小説としても主人公の成長小説としても読める力作だった。好景気に揺さぶられ、見栄とカネに翻弄されるバイプレイヤーたちの人生が生々しく、その人間味に引き込まれた。惜しむらくは中盤あたりまで主人公が傍観者のため、懐古的に映ったか。評者への賛同は少なかった。

さらば、若旦那 島之内亮

主人公の婚約者おみつがもっと立ち回ってもよかったのでは、また、ラストの運びが性急、といった指摘があったが、ユーモラスな前半から緊迫感を増していく展開には引き込まれるものがあった。四二〇枚強で五十近い章立てはやや多い。登場人物の心理をもっと掘り下げれば厚みが増すはず。次作に期待。

流氷 桃七海

筆者の人生を肯定するために書かれた小説という印象を受けた。文章のテンポは良く、先へ先へと読ませる力があるが、単語の扱いや比喩表現が古く残念。元特攻隊員を無理に物語に登場させたせいでプロットが破綻している。物語を語る力はあるので、物語を作る力があるのかどうか、見せていただきたい。自分と違う考え方の人物をどこまで描けるかが大切かと思う。

アストロツイン 山田甲八

本作の魅力は三点。一つ目は諏訪の論理的かつシャープな思考と話しぶり。二つ目はリーダビリティの高いストーリー展開。三つ目は声優、穂香のキャラクター。
だが、諏訪が龍一に終始親切にするのは不自然だし、金持ちになる手段は医者になる以外にもある。大学受験に親の面接があるのかという疑問も足を引っぱった。

 

やり投げ 山本慎太郎

南の島のコテージでひとり生活し「内線電話を取る」という仕事をすることになった主人公。この島を訪れる人々はみな圭介にとても優しく、好感を持ってくれる女性まで現れる。ほとんど疲れた中年男の妄想のような話だが、心地良かった。このメルヘンをもう少し現実で包んでくれたら、もっと多くの人の胸に迫るものにできるのではないだろうか。