トップ > 第14回小説現代長編新人賞4次選考通過作品発表!
編集部で4次選考を行った結果、3次選考で選ばれた16作品のうち、次の5作品が最終選考へと進むことになりました。受賞作品と選考委員選評は、2020年3月号(2月22日発売号)の「小説現代」に掲載する予定です。
全体的によくまとまっている。キャッチーな出だしから一変、次々に謎が提示されることで読み手を飽きさせない展開になっている。細かなところのどんでん返しも効いているが、結末の真相については評価が分かれるだろう。
身近なテーマを題材として、「共感」を得られる出来事を次々と起こし、飽きさせずに読ませました。タイトルも秀逸でした。
音楽という難しい素材を魅力的に書くことに成功している。しかし、三上が大河原先生の言葉を南雲に伝えるシチュエーションにはリアリティーがないし、多くの人物やエピソードが小説に織り込め切れていない。
消防の指令室やそこで働く職員にリアリティがあり、その部分だけでも興味深く読める。後半にいくにつれてサスペンスになっていくスリリングな展開が見事。主人公はやや個性に欠けるところもあるものの、物語の中枢でしっかり息づいていて、最後まで役割を果たしているところもよかった。完成度が高い。
キャラクター設定のユニークさもあり、冒頭から一気読みでした。ただ主人公が投稿する理由や、マイサンクチュアリ大賞のあとにすぐに次の賞を目指すあたり、展開がやや単調。もう一工夫欲しいです。
今世紀後半に向けての台湾、中国(と日本)の国際関係の変化を読みつつ、壮大な物語を構築しようという腕力や表現力は並外れている。その時代の空気に身を置いて、数奇な運命を辿った経験を元に世界的に評価された文学作品を書き上げた日本人記者を中心に据えながらも、数多くの人物が視点となる群像劇として時間的な振り幅も大きくダイナミックに描こうとしているがゆえに、規定枚数ギリギリまで使ってもまだ十全な説得力を獲得し切れていない。
主要人物4人の苦悩とそこから前進する姿を青春小説としてうまく書いている。脇役の忠弘も面白い。トワコの父が登場する展開などに作者の都合が見えてしまっている。物語の山場をもっと作ってほしかった。
話がしっかりまとまっている。お客さんのドラマのほか、主人公やその家族のドラマもあり、物語に厚みがある。逆にいえば、まとまりがありすぎて、新鮮さや驚きに欠ける。一つ一つの話に割く枚数も長すぎる。
日本の常識が全く通用しないメキシコの現実を、リアリティある描写で描き出したその筆力に、ただただ感嘆しました。ただ、脇の登場人物やディテールに懲りすぎて、肝心の物語の本質が見えにくくなっているように思いました。
婚約者が隠れて風俗で働いていたという摑みがよく、その後の主人公の内面描写も丁寧に書けている。しかし、二人が再会する必然性や説得力は不足しており、そこに至る展開も遅い。早苗と部長のつながりは不自然では。
主人公の心情とその変化が、いくつかの脇筋を織り込みつつ物語の中心を外さずにうまく書けている。母と疎遠になった原因などもっと書き込んでほしいところもあるし、表現の間違いも散見されるが、全体のレベルは高い。