小説現代

小説現代Facebookページ

小説現代Twitter

小説の愉楽を追求するノベルマガジン

小説現代

定期購読お申し込み

講談社リブラリアンの書架

小説現代Facebookページ

小説現代Twitter

小説の愉楽を追求するノベルマガジン

トップ > スペシャルページ一覧 > 第12回小説現代長編新人賞3次選考通過作品の講評

第12回小説現代長編新人賞
3次選考通過作品の講評

第12回小説現代長編新人賞
3次選考通過作品の講評

第12回小説現代長編新人賞は、2次選考で18作品が選ばれました。編集部で3次選考を行った結果、次の5作品が最終選考で審査されることになりました。
なお、受賞作品の発表と選考委員の選評は八月号(七月二十二日発売予定)に掲載いたします。

最終候補作品

丹生島城にうじまじょう聖将ヘラクレス あかがみりょう

父娘おやこ行儀 かつゆう

女一貫・営業らいふ はな

幕末ダウンタウン よしもりだいすけ

ネカフェナース  周子しゅうこ

二次選考通過作品の講評

月のうらがわ 麻宮好

 市井ものの時代小説として、全体の雰囲気作りには成功している。子どもの描き方など、丁寧な筆致は高く評価できる。
 ただ、登場人物の幾人かが物語のなかで不可解な退場の仕方をしたり、筆者が強く訴えたい場面がどこにあるのかわかりにくい印象があったりと、完成度の点でもう一歩の努力がほしい。次作に期待。

市のひと 市田市

 市役所職員の話なので、どこの市なのか場が大切な小説のはずなのに、具体的にイメージできないのが大きなマイナス。
 また、描かれている「時」も問題。なぜ、今ではないのだろうか。また、筆者の世界の見方が、一方的で楽観的過ぎるのにも同意できなかった。

健全な精神は健全な肉体に宿る 入山乙傘

 亡き祖母に「健全な精神は健全な肉体に宿る」と言われて育った主人公が真面目に生きたいのに、空き巣をせざるを得ない葛藤する心境を丁寧に書きこんで欲しい。
 文章は手慣れており、読みやすいのでもったいない。主人公が親のカタキを見誤る過程は、さすがに著者のご都合がすぎないか。

スマッシュイップス! 漆川丁々

 セリフ、序盤は生き生きとしているが、だんだんクドくなり、やがて飽きてくる。なぜなら内容が類型的で、キャラクターの描き分けがうまくいっていないから。
 すべての人物の内面を深く見つめて言葉をすくいあげてほしい。教師の口調が、がさつに感じ、女性に思えなくなった。卓球以外を題材としたものを読ませてほしい。

免許伝授 小林克彰

 文章が平易で読みやすい。人斬りの村井や天狗を名乗る大和田など面白い人物が登場するが、主人公の影が薄く物語の世界が狭い印象がある。父の切腹を介錯した苦悩や、仇討ちに向かう心の内をもっと書き込んでほしかった。
 また、父と師の間に何があったのかという謎の真相はさほど面白いものではなく、ラストもこれでは肩すかしだ。

じょうちゃん 里中智則

『坊っちゃん』の借景を現代風に使っている。主人公の友人であるキヨという強烈な女性の存在が物語の牽引力になってはいるが、田舎だからだとしても小学校を巡る話としては、様々なエピソードが物足りない。
 また、山場が研究発表というのもいかんせん弱い。読者が求める、この小説での笑い、面白さとは何かをもっと突き詰めて欲しかった。

一休・骸骨 萩原彰彦

 文章に安定感と艶がある。題材が奇抜であるため、もう少し物語のテンポを上げてくれればさらに良かった。日本版グリム童話といえるような読み心地だ。現状は人物の魅力と文章の巧さで読ませるが、単行本市場で勝負するためには「読めばおもしろい」のは当然で、「読む前におもしろい」必要がある。千五百円を払わずにいられない魅力的な導入と筋書きを用意できれば、さらに素晴らしい作品になる。是非、また応募してください。

難馬黒鉄と平下征五郎 長谷川辛之

 馬に着目したアイデアはよかった。何人も乗せない荒馬と頑なな主人公が、一体となって藩の危機に立ち向かう後半の盛り上げもよい。が、戦況や状況説明の入れ込み方が生硬で、大仰で違和感のある比喩が目立つ。
 また、時折挿入される故事等に誤認があり、不安を覚えながら読んだ。狙いはいいので、もう少し腰を据えて書いてみてほしい。

雨があがる 初瀬みのり

 小説の題材として正直新味には欠けると思った。が、とても安定した筆致で戦前から戦後のある家族の物語を描ききっており、非常に好感を持った。ただ、やはり登場人物が多いため物語のピークになる部分が若干弱かったように思う。もう少しメリハリをつけてみてもよかったかもしれない。筆力は十分にあるので、新しい作品を期待します。

TOO HOT 光一

「グレイ」「チンピラ」などと仇名された柔道部員たちの暴言・奇行に思わず何度も吹き出してしまった。「変人ばかりの部活モノ」は漫画にも傑作が多いが、小説でここまで笑わせてもらえるものは珍しいのではないだろうか。  一転、試合が始まると退屈で、団体戦の経過をそのまま書く必要はなかったと思う。部員の苦悩や悲しい過去にも共感はできなかった。

ひでこの盤 民謡馬鹿物語 本木源

 主人公が手順を追って、民謡に隠された謎を解き明かしていく展開はミステリー小説のようで、楽しんで読むことができた。また、昭和二十年代の風俗も描かれ、当時の雰囲気も良く書けていたと感じる。
 しかし、題材がややマニアックで小さい世界での話になってしまっている点、結末で明かされる真相はこれでよかったのかという点が気になったところ。別のジャンル、別の題材の話も読んでみたい。

マスク・ド・ファイヴの青春 森内優希

 ミュージシャンの下積み生活の描写がリアルで、とてもよくできていた。主要登場人物のキャラクターも立っていた。ただ、中盤の子供向けセカンドシングルの大ヒットまでは面白く読み進められるのだが、紅白歌合戦出場後の全国武者修行の展開に疑問。歌の営業とあまりにもかけ離れていて、リアリティーが感じられなくなってしまった。
 あと、実在の芸能人をもじった人物たちの登場も、話の世界観に対して違和感が感じられた。

梟雄の忠義 竜崎蒼

 読みやすい文章で、戦国三梟雄の一人である松永久秀を三好長慶の忠臣として描き、カッコよく見せることに成功しているのは見事。登場人物の絡ませ方や出し入れの仕方も上手いと感じた。
 一方、織田信長などは類型的な印象だった。また、時代小説は出来事を変更することはできないので、決められた枠組みの中でいかに〝自分だから書けること〟を作り出すかが課題となる。次はどんなテーマで書くのか気になるところ。